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3つの腫瘍の針検詳細の結果

Y先生とのメールのやり取りをブログに載せてもいいかと聞きましたところ許可を頂いたので
転載します。このように、丁寧な説明および、Y先生の意見を伺わせていただけました。
長いですが、最後までお付き合いくださいませ。

サミーの細胞診の結果が出ました。所見は以下のとおりです。
(診断) 非上皮性悪性腫瘍
・過去に切除した肉腫の全身転移
・特に組織球性肉腫を疑う。滑膜肉腫との鑑別が必要

(診断医のコメント)
いずれの腫瘤からも同様の腫瘍細胞が採取されています。腫瘍細胞は非上皮系細胞と考えられ、強い異形成を伴って無秩序かつ積極的に増殖する所見から、非上皮性悪性腫瘍と診断されます。個々の細胞形態は組織球に類似しており、前回MFH(悪性線維性組織球肉腫)と診断された肘部腫瘍の転移病変と考えられます。しかし現在MFHとの診断名はあまり使用されなくなっており、別の腫瘍であることも考慮する必要があります。組織球様非上皮系細胞が主体であることから第一に組織球性肉腫が疑われます。原発病変が肘部であることから、滑膜肉腫も考慮する必要があります。真にMFHと診断せざるを得ない腫瘍であることは当然否定できません。腫瘍は全身転移していると思われ、短期的予後に厳重な警戒が必要です。局所的な治療は無効と思われます。可能性があるとすれば、組織球性肉腫であることを考慮してCCNUを使用する価値があると思います。確定診断にはバイオプシーが必要です。

以上、細胞診の診断結果と診断医のコメントです。

解りやすく説明すると、やはり肘に出来たMFH(悪性線維性組織球肉腫)が転移したものだろう、という結果です。専門的にはMFHという病名はやや古いものなのですが、「組織球系の悪性腫瘍」ということでは変わりありません。滑膜肉腫の件は、細胞診上の区別が困難なのでコメントに載せたものと思いますが、これも悪性腫瘍であることには変りなく、前回の手術の際の病理検査の結果を優先して考えれば、やはり組織球性肉腫と考えて良いと思います。そしてやはり、肘に出来たものが全身転移を起こしている、という解釈で間違いないでしょう。

CCNUというのは抗がん剤です。これに関しては、以前のメールで簡単に説明しましたね。

今回の結果を考え合わせると、レントゲンで肺に写った「影」というのは、同じものの転移病変である可能性が非常に高いということになるでしょう。

予想していたとは言いながらも、やはり残念な結果です。

なるべく臨床症状が現れずに、少しでも快適に過ごせることを、お祈りします。

取り急ぎ、ご報告のみで失礼いたします。


丁寧なご説明ありがとうございます。
あの後、4日が経ってから元の大きさに収まるところが少し小さくなりました。
炎症でも起こしたようですね。触った時は熱をこもっていましたが、今は平常に戻りました。
大きくなった部分は前に切ってもらったところは左前脚の肘でした。
今回は左腹の部分です。場所は違います。
サミーは聴導犬として引退しましたのでいまは御隠居です。
ときどき元聴導犬として出かけることがありますが、あくまでもサミーの体調との 相談してから
出かけています近いうちにそちらへ伺うのでその時はよろしくお願いします


お返事遅くなり申し訳ありません。
まずサミーの病名ですが、悪性線維性組織球腫(悪性組織球肉腫)ということですね。
組織球系の悪性腫瘍は幾つかタイプがあるのですが、犬種の変遷などにより比較的近年になって注目され始めたような事情があるためか、分類の仕方にやや混乱が見られます。しかし大雑把にはLocalizedのタイプとSystemicのタイプに分類されます。サミーの場合は恐らく、Localizedの組織球肉腫(HS)が転移、再発したもの、ということだと考えられると思います。

金曜日に一日にして1.5cmくらいの腫瘍が4cmほど急成長しました。
これは、以前に手術で切除した部位に局所再発したもののことでしょうか?

Localized HSの治療は原則的に早期の外科切除で、しっかりとマージンを取って大きく切除することが第一です。「大きく」と言う言葉には“断脚”という意味も含まれます。もちろんサミーは聴導犬ですし、最初の時点でどこまで切除すべきかというのは、(後になって色々言うことは出来ますが)なかなか難しいところだったと思います。

切除した後、放射線治療が一応最も有効とされています。そして更に、再発予防として抗癌剤を使用する場合もあります。しかしこれで再発してしまった場合には、正直言ってあまり有効な治療法はありません。抗癌剤と言うのは、顕微鏡レベルで癌細胞が体のあちこちに散らばっている(かもしれない)ような場合には有効ですが、固形の癌の塊を形成しているようなものに対しては、あまり効果は期待出来ません。もちろん、多少の延命効果はあるかもしれませんが、それほど有意差があるという訳ではないようです。

仮に抗癌剤を使用する場合は、CCNU(ロムスチン)という抗癌剤を使うことが多いです。これは日本国内では製品が無いため、海外から輸入して使用します。よくある副作用は骨髄抑制、つまり白血球や赤血球の数が減ることですが、副作用の出方には個体差がありますので、あまり副作用の出ない子もいます。

ただ今、心臓の薬、咳止め薬を頂いているのに 余計にステロイド剤とプレドニン剤を使用しましょうかとさらに薬を増やそうとしていたので 断りました。

心臓も悪いのですか?これはHSとは関係ありませんよね。咳はやはり肺の転移巣が原因で出ていると言う判断でしょうか? プレドニン(=ステロイド)の服用に意味があるかどうかは、目的によると思います。マスコミの影響で「ステロイド=こわい薬」という誤ったイメージが定着していますが(そしてこのイメージがアトピーや癌に対する悪徳商法を蔓延り易くしているのですが・・・)、決してそんなことはありません。もちろん多量に長期間使用した場合にはそれなりの副作用が出ます。しかしステロイド剤は非常に歴史の古い薬剤ですし、我々獣医師もステロイドの副作用に対しては大抵、充分な知識と経験がありますので、多くの場合で副作用の危険を回避しながら使用することが可能です。

またステロイドの副作用には「食欲増進」というのがあります。これは、食欲のなくなった重症患者に対して、わざとこの副作用の発現を狙って使うこともあります。

ステロイド剤は基本的には消炎剤です(多量に投与すれば免疫抑制効果もあります)。ステロイド剤を飲んだ方が、咳が減るなど好ましい効果がみられるのなら、投与する意味はあるように思います。ただ、食欲はあるようですし、咳止め薬がある程度効いているのなら、ステロイドの必要性はあまり無い様な気もします。

残念ながら、現状では「治癒・改善」に向けた有効な治療法をアドバイスすることが出来ません。強いて挙げるなら、「免疫療法」という癌治療があります。

これは、患者自身のリンパ球を使い、これを体外で大量に増殖させて体に戻して癌細胞をやっつけさせる、という治療法で、一部の大学や高度医療センターなどで行っています。しかしHSに対して有効かどうか判りませんし、この治療自体がまだデータ不足なので、試す価値があるかどうかは不明です。たしか日獣でもこの研究を行っていたと思いますが、診察のときにこの話が出なかったと言うことは、この治療の対象に当てはまらない、ということなのかもしれません。

食欲は旺盛ということなので、それなりにバランスの良い食事をしてもらうと良いと思います。一応は、ヒルズのn/dなどが推奨されていますが、脂肪が多いため下痢をする子が多く、好き嫌いもありますから、これにこだわる必要はないと思います。良質の蛋白質を充分に摂取してもらうと良いと思います。

“がんに効く”という触れ込みのサプリメントは、それこそ沢山あります。しかしその大半は怪しいものです。獣医師や関連学会などの報告で「効いた」と発表されているものもありますが、実際には研究自体のデザインが不適切なので、あまり意味のあるデータではないものが殆どです。ヒトのものでも、「がんに効く」と謳われて販売されながら、実は癌の発生を促進するものが含まれていたり、あるいは強い副作用をもつサプリメントも少なくありません。一時期爆発的に流行したアガリクスも、「ほとんど効果がない」ということが判ってからはすっかり下火になってしまいました。

私自身も「どれが良くて、どれが悪い」とはなかなか言い切るのは難しいのですが、それでも抗酸化作用が期待できるもので、動物への投与の安全性がある程度確認されているものでしたら、与えても良いだろうと思います。しかしあれこれ何種類も与えるのはやはり健康被害の危険性があるので、安全性を考えるのならば、動物用医薬品メーカーが作っていてそれなりに広く流通しているものが最も安心だと思います。そう言う意味ではD-フラクションなどは、与えても良いと思います。

by yummypon | 2010-05-15 22:07 | 獣医・健康
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I am hearing dog for Yummy


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